結婚相談所の開業に助成金は使えない?補助金との違いと使える制度

結婚相談所の開業に助成金は使えない?補助金との違いと使える制度

結婚相談所の開業資金を調べていると「助成金」という言葉によく出会います。ただ、一人で開業するなら、いわゆる助成金はほとんど使えません。厚生労働省が所管する助成金は、賃金を引き上げる労働者がいることが前提に設計されているからです。

現実的な選択肢は、経済産業省系の補助金と、日本政策金融公庫の融資の2つです。そして補助金は、開業届を出したあとでなければ申請できません。つまり開業前の資金は融資で手当てするしかないのが制度上の答えです。

この記事では、制度名だけを並べることはしません。公募要領と各省庁の公式ページを実際に開いて、結婚相談所を一人で開業する人が本当に使えるのはどれかを判定します。数値はすべて2026年9月時点の確認です。

  • なぜ一人開業では助成金が使えないのか(厚労省の原文)
  • 開業「前」と「後」で使える制度がどう変わるか
  • 小規模事業者持続化補助金の上限・採択率・対象外になる経費
  • 見落としやすい「事業支援計画書」の締切
  • 連盟の公式料金から見た、調達すべき金額
  • 廃止された「新創業融資制度」と、現行の創業融資
目次

結論:一人開業なら助成金は使えない。狙うのは補助金と融資

従業員を雇わずに開業するなら、厚生労働省系の助成金は制度上使えません。狙うべきは中小企業庁の補助金と、日本政策金融公庫の融資です。

まず「助成金」と「補助金」は別物です。助成金は要件を満たせば原則受給できる代わりに、要件そのものが雇用に紐づいています。一方の補助金は事業計画を審査して採択する方式で、雇用の有無は問われません。この違いが、一人開業かどうかで使える制度を分けます。

制度所管一人(従業員なし)で使えるか金額の目安
業務改善助成金厚生労働省使えない(労働者がいることが要件)
キャリアアップ助成金厚生労働省使えない(有期雇用労働者の雇用が前提)
小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>中小企業庁使える(ただし開業後)上限50万円/補助率2/3
小規模事業者持続化補助金<創業型>中小企業庁使える(開業後かつ要件あり)上限200万円/補助率2/3
新規開業・スタートアップ支援資金日本政策金融公庫使える(開業前から相談可)融資限度額7,200万円

補助金は返済不要、融資は返済が必要です。ただし補助金は後払いで、採択されてもいったん自分で全額を支払う必要があります。開業時の手元資金という意味では、補助金は当てにできません。

なぜ「助成金」が使えないのか

厚生労働省の助成金は、労働者の待遇を改善した事業主に支給する仕組みです。労働者がいなければ、改善する対象そのものが存在しません。

業務改善助成金:厚労省が明記している

設備投資などをして事業場内最低賃金を引き上げた中小企業を支援する制度です。公式ページに、次のとおり明記されています(出典:厚生労働省 業務改善助成金、2026年9月確認)。

労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません。

この制度は「事業場内最低賃金を50円以上引き上げる」ことが要件です。賃金を払う相手がいなければ、そもそも要件を満たしようがありません。令和8年度の申請期間は2026年9月1日から、申請事業場の都道府県で適用される地域別最低賃金の発効日の前日または2026年11月30日のいずれか早い日までです。

キャリアアップ助成金:有期雇用の労働者がいることが前提

非正規雇用の労働者を正社員化したり待遇を改善したりした事業主が対象です。支給対象は雇用保険適用事業所の事業主で、対象労働者は有期雇用労働者などに限られます。一人で開業する個人事業主には適用する場面がありません

逆にいえば、カウンセラーを雇う計画があるなら、これらは選択肢に入ります。ただし雇ってからの話で、開業資金の調達手段にはなりません。

開業「前」と「後」で使える制度は変わる

補助金は、開業届を出したあとでなければ申請できません。開業前に手当てできるのは融資だけです。ここを取り違えると、資金計画そのものが成り立たなくなります。

小規模事業者持続化補助金の公募要領には、一般型・創業型のどちらにも同じ除外規定が書かれています(出典:小規模事業者持続化補助金<一般型・通常枠>第20回公募要領)。

申請時点で開業していない創業予定者(例えば、既に税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外)

つまり開業届の開業日が申請日より後なら、どちらの型も対象外です。「創業型」という名前から創業前でも使えると誤解されがちですが、そうではありません。開業届を出したうえで、まだ営業を始めていない段階なら対象になりうる、という位置づけです。

タイミング使える制度根拠
開業届を出す前日本政策金融公庫の融資のみ補助金は開業していない創業予定者を対象外としている
開業届を出した直後(営業開始前後)<創業型>+融資特定創業支援等事業の支援を受けた日と開業日が公募締切から過去1年以内であること
開業して事業を営んでいる<一般型・通常枠>+融資常時使用する従業員数などの要件を満たすこと
従業員を雇っている上記+厚労省の助成金労働者がいることが前提の制度が使えるようになる

<創業型>は補助上限200万円・補助率2/3、インボイス特例で上限が一律50万円上乗せされます。ただし要件が独特で、産業競争力強化法に基づく認定市区町村などが実施する「特定創業支援等事業」による支援を受けた日と、開業日の両方が、公募締切から起算して過去1か年の間にあることが必要です(出典:小規模事業者持続化補助金<創業型> 第4回公募要領)。市区町村の窓口で受ける創業支援を、開業と同じ時期に済ませておく必要があります。

小規模事業者持続化補助金の実際:上限50万円、2件に1件は落ちる

一人開業でもっとも現実的な補助金です。ただし上限は50万円で、採択率は約47%。そして開業費の主要な部分が対象外経費に指定されています

金額と要件

  • 補助上限50万円/補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)
  • インボイス特例で50万円上乗せ、賃金引上げ特例で150万円上乗せ。両方に該当すれば最大250万円
  • 対象は商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)なら常時使用する従業員が5人以下。一人開業はここに含まれる
  • 第20回は申請受付が2026年11月5日から、締切は2026年12月15日17:00

上乗せ特例は無条件ではありません。インボイス特例は適格請求書発行事業者になること、賃金引上げ特例は事業場内最低賃金の引き上げが条件です。一人開業でいきなり250万円が狙えるわけではない点は押さえておいてください。

採択率は約47%

中小企業庁の発表によると、第19回公募は申請16,576件に対して採択7,819件でした(2026年7月29日発表)。採択率は約47.2%で、2件に1件は落ちています。「申請すればもらえる」制度ではありません。

対象外経費に開業費の主要部分が入っている

ここが最大の落とし穴です。公募要領が挙げる補助対象外経費には、結婚相談所の開業で真っ先に必要になるものが並んでいます。

対象外の経費結婚相談所開業での意味
パソコン・事務用プリンター会員管理に使うPCは補助対象にならない
駐車場代、保証金、敷金事務所を借りるときの初期費用が対象外
電話代、インターネット利用料金等の通信費ランニングコストは見てもらえない
茶菓、飲食、奢侈、娯楽、接待の費用面談時の飲食費なども対象外

補助対象になるのは販路開拓のための費用です。ホームページ制作、広告出稿、チラシ制作といった集客まわりの投資が中心になります。会員をどう集めるかは結婚相談所の集客の記事で公開データから逆算しています。

見落としやすい「事業支援計画書」の締切

申請には商工会議所または商工会が発行する事業支援計画書(様式4)が必要で、その発行受付締切は申請締切より前に設定されています。第20回は申請締切が2026年12月15日なのに対し、事業支援計画書の発行受付締切は12月4日。11日早く終わります。

締切間際に商工会議所へ駆け込んでも間に合いません。申請を考えた時点で、まず地域の商工会議所・商工会に相談するのが実務上の順番です。

調達すべき金額を決める:連盟の公式料金

補助金で埋められる範囲が見えたところで、調達すべき総額を確定させます。結婚相談所の開業費で大きいのは連盟への加盟金で、公式サイトに載っている金額だけでも66万円から200万円の幅があります。

連盟加盟金・初期費用月額の固定費
IBJ個人契約200万円/法人契約400万円/法人エンタープライズ700万円(税抜)IBJネットワーク月会費15,000円+3,800円×カウンセラー人数(税抜)
TMS(全国結婚相談事業者連盟)開業ページに総額の記載なし月額固定費12,000円(税別)
BIU(日本ブライダル連盟)加盟ページは800,000円、トップページは「業界最安の660,000円」と公式サイト内で表記が一致しない月会費15,000円
JBA(日本結婚相談協会)110万円月額システム利用料16,500円〜

いずれも2026年9月時点で各連盟の公式サイトに掲載されていた金額です。BIUとJBAは公式サイトに時点の記載がなく、BIUは同じサイト内で加盟金の表記が2種類あります。加盟前に必ず直接確認してください。詳細は結婚相談所連盟の比較記事にまとめています。

ここに広告費と運転資金が加わります。加盟金は補助金の対象外と考えるのが安全で、実際に持続化補助金で補助されるのは開業後の販路開拓費です。つまり加盟金は自己資金か融資でまかなうしかありません

開業前の資金は融資で手当てする

開業届を出す前に使えるのは融資だけです。日本政策金融公庫の創業融資が中心になりますが、制度の名前が2024年に変わっている点に注意してください。

「新創業融資制度」はもう存在しない

かつて創業融資の代名詞だった「新創業融資制度」は、2024年4月1日付で各創業融資制度に統合されました。公庫のプレスリリースでも「旧:新創業融資制度」と表記されています(出典:日本政策金融公庫 2024年4月1日プレスリリース)。いまだにこの名前で解説している記事は、2024年3月以前の情報のまま更新されていないと考えてください。

現行制度と、2024年に変わったこと

項目内容
制度名新規開業・スタートアップ支援資金
対象新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円
返済期間設備資金20年以内/運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)
無担保・無保証人の枠3,000万円 → 7,200万円に拡大(新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方)
自己資金要件2023年度「創業資金総額の1/10以上」→ 2024年度「なし」
運転資金の返済期間7年以内(原則)→ 10年以内(原則)

出典は日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金および上記プレスリリース(いずれも2026年9月確認)。自己資金の要件が「なし」になったことは、公庫のリリースに明記されています。ただしこれは要件として撤廃されたという意味であり、実際の審査で何を見られるかは別の話です。融資の可否や条件については公庫の窓口で直接確認してください。

必要な資金の総額は、加盟する連盟によって大きく変わります。連盟ごとの加盟金と月額費用は結婚相談所連盟の比較記事に、開業後にいくら残るのかは儲からないと言われる構造を検証した記事にまとめています。

制度を調べるときに気をつけること

補助金・助成金の情報は古くなるのが早く、しかも終了したサイトがそのまま検索結果に残っています。情報源の見分け方から押さえてください。

「ミラサポ」を名乗るサイトに注意

中小企業庁がかつて運営していた「ミラサポ」は終了し、そのドメインは現在、第三者が取得して利用しています。中小企業庁は次のとおり注意喚起しています(2025年5月15日公表/2025年10月8日最終更新。出典:中小企業庁「ミラサポWebサイトに係る注意喚起について」)。

「mirasapo」という文字を含み、「.go.jp」以外のドメインを使用しているウェブサイトは、すでに終了したものであり、弊庁の事業とは一切関係ございません

ところが、結婚相談所の助成金を解説する記事のなかには、いまだにこのドメインへリンクしているものがあります。現行の公式サイトはミラサポplus(mirasapo-plus.go.jp)です。中小企業庁も説明しているとおり、「go.jp」は日本政府系機関だけが使えるドメインなので、ここを手がかりに正規のサイトかどうかを判断できます。

制度は年度で変わる。必ず公募要領を見る

  • 金額・補助率・枠の構成は年度や公募回ごとに変わる。まとめ記事の数字をそのまま信じない
  • 補助金の申請はjGrants(GビズIDが必要)から行う
  • 補助金は後払い。採択されても、いったん自分で全額を支払ってから実績報告を経て入金される
  • 本記事の数値も2026年9月時点のもの。申請前に各事務局の公募要領で必ず確認する

制度の適用可否は個別の事情によって変わります。申請にあたっては、地域の商工会議所・商工会、社会保険労務士、日本政策金融公庫の窓口など、専門家への確認をおすすめします。

よくある質問

結婚相談所の開業に助成金は使えますか?

従業員を雇わずに一人で開業する場合、厚生労働省系の助成金は使えません。業務改善助成金の公式ページには「労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません」と明記されています。キャリアアップ助成金も有期雇用労働者の雇用が前提です。使えるのは中小企業庁の補助金と、日本政策金融公庫の融資になります。

開業する前に小規模事業者持続化補助金を申請できますか?

できません。公募要領に「申請時点で開業していない創業予定者(例えば、既に税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外)」と書かれており、一般型・創業型のどちらも同じです。開業前の資金は融資で手当てすることになります。

持続化補助金でパソコンや会員管理システムは買えますか?

パソコンと事務用プリンターは公募要領で補助対象外の経費に挙げられています。駐車場代・保証金・敷金、通信費、飲食や接待の費用も対象外です。補助対象になるのはホームページ制作や広告出稿など、販路開拓のための費用が中心です。

新創業融資制度はまだ使えますか?

2024年4月1日付で各創業融資制度に統合され、単独の制度としては存在しません。日本政策金融公庫のプレスリリースでも「旧:新創業融資制度」と表記されています。現行は「新規開業・スタートアップ支援資金」で、融資限度額は7,200万円、無担保・無保証人の枠も7,200万円に拡大されています。

補助金はいつ入金されますか?

補助金は後払いです。採択されたあとに交付決定を受け、自分で経費を全額支払い、実績報告を提出して審査を経てから入金されます。開業時の手元資金としては当てにできないため、支払いを立て替えられるだけの運転資金を別に用意しておく必要があります。

まとめ:補助金は開業後の制度、開業前は融資

  • 一人で開業するなら厚労省系の助成金は使えない。「労働者(従業員)がいない場合は、助成の対象となりません」と明記されている
  • 小規模事業者持続化補助金は開業届の開業日が申請日より後だと対象外。一般型も創業型も同じ
  • 一般型は上限50万円・補助率2/3。第19回の採択率は約47.2%で、2件に1件は落ちる
  • パソコン・敷金・通信費は補助対象外。補助されるのは販路開拓の費用
  • 事業支援計画書の発行受付締切は申請締切より早い(第20回は11日前)
  • 開業前の資金は日本政策金融公庫の融資。「新創業融資制度」は2024年に統合されて存在しない
  • 「mirasapo」を含む go.jp 以外のドメインは中小企業庁と無関係。正規は ミラサポplus と jGrants

最初の一歩は、開業届をいつ出すかを決めることです。補助金が使えるかどうかはその日付で決まります。そして開業届を出したら、申請を考える前に地域の商工会議所・商工会へ相談してください。事業支援計画書がなければ、そもそも申請ができません。

本記事の制度内容・金額は、各省庁および補助金事務局の公式サイトと公募要領にもとづき2026年9月4日に確認したものです。制度は年度・公募回ごとに変わるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。運営者については運営者プロフィールをご覧ください。

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